初級編の記事で書いたとおり、このシリーズは文法を口の運動として身につけるドリルブックだ。中級編はその続きで、2021年12月に初級と同年で出た。著者は同じく横山雅彦・中村佐知子。装丁も判型も初級と揃っていて、棚に並べると気持ちのいい2冊だ。
中身の転換ははっきりしている。初級が「1つの文を正確に言えるか」の本だったのに対して、中級は「文と文をつないで言えるか」の本だ。本書はこの複文の骨組みを「経糸(たていと)」と呼び、そこにニュアンスを足す要素を「横糸」と呼んでいる。
中級編の構成
全14ユニットを2部に分けている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 英語のハノン 中級 ――スピーキングのためのやりなおし英文法スーパードリル |
| 著者 | 横山雅彦・中村佐知子 |
| 出版社 | 筑摩書房(2021年12月) |
| ページ数 | 216ページ(A5判) |
| 価格 | 1,870円(税込) |
| ISBN | 978-4-480-81685-6 |
| 構成 | 全14ユニット(2部構成)、1ドリル5文 |
| 音声 | 無料ダウンロード(スロー/ナチュラルの2種) |
第1部(Unit 1〜7)は接続詞の集中区間だ。副詞節を作る接続詞から始めて、注意すべき as、that の使い分け、名詞節を導く that と whether / if、同格節まで。接続詞だけで本の半分を使う配分に、この本の主張が出ている。話し言葉の「それっぽさ」は、実は接続の仕方で決まる、という判断だ。
第2部(Unit 8〜14)は、過去完了形・未来完了形、間接話法、疑問詞節、比較の3ユニット(原級・比較級・最上級)、倒置。初級で残っていた文法項目を拾いながら、文に細かいニュアンスを足していく区間だ。比較の Unit 12 と 13 は各15ドリルと、この本でいちばん分量の多いところでもある。
初級編との違い
初級との違いは、ドリルの中で頭に保持しなければならない量だ。回し方の原則は初級と同じで、開本で形を結びつけて、閉本で言えるまで。1日1ドリル。
初級の変換は、1つの文の中で主語や時制を入れ替える作業だった。中級では、主節の形を保持したまま、従属節の中身を組み替える場面が出てくる。文が長くなるぶん、ポーズの間に考えることが増えて、同じ「1ドリル5文」でも1回転にかかる時間が伸びる。初級のペース感覚で「今日は2ドリル」と欲張ると、だいたい2つ目で崩れる。
もう1つの違いは、間違いの見え方だ。初級の間違いは形の間違いで、自分でも気づける。中級の間違いは接続の選択の間違いで、言い切れてしまうのに意味がずれることがある。閉本でスラスラ言えることに加えて、言った文の意味が合っているかを本で確かめる往復が、初級より大事になる。
入口の条件
入口の条件は、文法知識ではなく初級編との関係で決まる。
初級編を閉本で回せるようになった人なら、そのまま入れる。逆に、初級を飛ばして中級から入るのはおすすめしない。複文のドリルは、単文が自動で出てくる前提で設計されているので、土台がないと保持の練習ではなく暗記の練習になってしまう。
初級をやっていないけれど単文には自信がある、という人は、初級の後半ユニットを閉本で試してみるといい。スラスラ言えるなら中級からでも構わない。言えなければ、遠回りに見えて初級からが速い。
試験の数字で置くと、扱う文法は高校の範囲が中心だ。ただ初級の記事でも書いたとおり、このシリーズの難しさは知識ではなく運用の側にある。読めば分かる文を、接続詞つきで一息に言えるか。そこが中級編の物差しだ。
次の1冊
中級を終えた先には上級編がある。上級は関係詞の徹底攻略と、より洗練された表現が中心で、このシリーズの頂点と位置づけられている。横道のフレーズ編・ロジック編も含めて、各編の詳しい中身は別の記事で扱う。
まとめ
中級編は、『英語のハノン』が「文法のドリル」から「話すためのドリル」に踏み込む1冊だ。接続詞で文をつなぎ、保持しながら組み替える。初級を閉本で回せるようになったら、迷わず次はここだ。ペースは初級より落として、1日1ドリルを守ること。それがこの本の回し方だ。
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